12話 肝炎ウィルスによる肝癌の違い
B型肝炎の肝癌患者の年齢は、40歳〜50歳代前半、一方C型肝炎では、50歳代後半から60歳代がピークです。B型肝炎の方が約10歳〜15歳ほど若くなっています。この理由については、C型肝炎の発癌は、肝細胞の炎症と繊維化の過程を経て、徐々に、正常の肝細胞の修復再生ができなくなり、発癌に至る時間の要素が多く関与しています。C型肝炎のウィルスはRNAウィルスで、人間の遺伝子を構成しているDNAとは異なります。ですから、直接に遺伝子に組み込まれる確率は低く、発癌には、イニシエーター、プロモーターというプロセスを踏まえて,時間をかけながら発癌に至ります。
一方、B型肝炎ウィルスはDNAウィルスで、人間の細胞を構成している遺伝子と同じタイプです。ですから、細胞内の遺伝子に直接組み込まれやすく、細胞の突然変異をひきおこし、発癌に結びつく可能性が高くなります。発癌は、プロセスを踏まずに、突然に起こります。そして、発癌の速度は速く、肝臓内に一つの腫瘍として,大きく成長します。
一方、C型肝炎の肝癌は、肝臓内に、同時に多発します。同じ程度の大きさの腫瘍が複数個存在することが,少なくありません。同時多発というテロではないですが、C型肝炎の肝癌はこの性質を持ちます。一般に悪性腫瘍では、血液の癌を除いては、単独で存在し、そこから転移に至るタイプがほとんどです。その点、C型肝炎の肝癌の同時多発性という性質は,癌としては,珍しいタイプに入ります。
岡部・浦川クリニック