最近の人間ドックでは、C型肝炎ウィルス抗体(HCV抗体)をスクリーニングで検査する機会が多くなりましたが、これは、C型慢性肝炎が国民病との認識が高くなったためだと思います。一説では、C型肝炎ウィルスに感染している人は、日本では200万人〜400万人とも言われています。
しかし、このC型肝炎ウィルス抗体が陽性であるからといって、必ずしも現在、肝炎を患っているとは限りません。一般に、初診、ドックなどで検査するHCV抗体は、C型肝炎ウィルスが、一度でも体内に入れば、陽性となります。しかし、ウィルスの量が少ない場合、体の免疫力が優れている場合は、肝炎ウィルスは、体内から排除され、慢性肝炎には移行しない場合があります。C型肝炎ウィルスが、慢性肝炎に移行するケースは、確かに多いのですが、ウィルスの排除となれば、肝炎は持続せず、治癒となり、肝機機能(AST、ALT)は正常化となります。この場合、後々、ドックの時に、C型肝炎ウィルス抗体(HCV抗体)を検査すると、陽性を示しますが、肝機能は正常です。
このケースでは、実際にウィルスが体内に、存在するか否かを判定する為に、HCV-RNA定性検査を行います。これは、最高感度で、血中のウィルスを検査する方法で、判定は、+か−です。−であれば、体内にウィルスは存在せず、HCV抗体陽性は、ウィルスの過去の既感染を意味し、治療の対象にはなりません。もし、+であれば、キャリアか慢性肝炎のどちらかを意味します。
キャリアと言うのは、肝炎ウィルスは体内に存在するが、肝炎は発症していないということです。ウィルス感染があれば、直ぐに感染症となるわけではなく、体の免疫力などが優れていると、ウィルスの活動を封じ込め、活動を沈静化させます。インフルエンザウィルスでも同じことがあります。感染しても、体が元気であれば、症状がなく経過します。肝炎でも、元気であれば、症状、即ち肝機能異常は出現せずに、経過します。これが、キャリアです。キャリアの本来の意味は、”運ぶ”と言うことですから、ウィルスの担ぎ屋とでも解釈したら、想像できそうです。キャリアであれば、年に1〜2回程度の、肝機能検査でフォローし、肝炎の発症がないか、チェックします。慢性肝炎と診断されれば、治療の対象になります。
結局、まとめると下の図となります。C型肝炎ウィルス抗体陽性の方は、必ず、HCV-RNA定性検査を受けて下さい。それが、C型肝炎ウィルスへの最初の戦いとなります。
HCV抗体陽性 → HCV-RNA定性検査
→ 陰性 = 過去の既感染
→ 陽性
→肝機能正常 = キャリア
→肝機能異常 = 慢性肝炎
岡部・浦川クリニック